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【新世界物語。】明日への道しるべを照らすー通天閣てっぺん色の秘密ー

足早に過ぎていくテールランプとオレンジ色に光るライトを横目に
忙しない阪神高速を駆ける日曜日の夜。

「今日、ほんとに楽しかった。また行こうね。」

ふらっと立ち寄った海の香りがほんのり香る車内に寂しさを隠しきれない、
君の少しかすみがかった声が耳に残った。

「明日また、晴れるかな。」

ぼんやりと流れる雲を見ながら声を漏らす君と、
2巡目に入った僕のプレイリストが旅の終わりを神妙に訴えかけていた。

ふと目を外に向けると白い点滅が2つ。

天王寺インターを過ぎる手前から僕の視界がそれを捉えていた。

「大丈夫、晴れるよ。また明日も楽しみだね。」

なんでわかるの?って顔をしている君を横目に僕は
汗ばんだ右手からほったらかしにしていた左手にハンドルを持ち替える。

大阪府民でもなかなか浸透が無いが、
新世界のシンボル、通天閣には観光名所としての才能以外にも
明日を色づけてくれる才能を持つ。

主に赤、青、白の三色で意味合いを教えてくれるが、
特別雪の日だけはなぜかピンク色に輝き出す。

恐らくこの3色を用いているのには、
建設当初、パリのエッフェル塔をモチーフにして作られたからではないだろうか
という噂も巷ではざわめいている。

天気だけでなく、月によっても通天閣は姿を変える。

春になれば鮮やかな新しい門出の始まりを告げる彩りに、
夏には爽やかで溌剌とした、青い春を醸し出す思い出に残る姿に。

秋には少し落ち着いたほっこらとした顔を見せ、
冬になれば誰かに温もりを与えてくれる、そんな人々の心に寄り添った姿に移り変わっていく。

昨今、世間を混沌とさせているコロナウィルスの危機度も
自らの体を張って僕たちに必死にメッセージを送ってくれていたのは、記憶に新しい。

人々の日常生活を支えながら、非日常の喜びにも全力で応えてくれるその姿に
心を打たれて、今日という世界に光を与えてくれる。

「わぁ、ほんとだ。明日ずっと晴れだって。何でわかったの?」

細く今にも折れそうな右手からぶら下げられた携帯を片手に、
ポカンと口を開けながら君は言った。

「んー、なんとなく。そんな気がしたんだ。」

高速の降り口の名前を連呼するナビがつんざめくなか、
僕はそっとつぶやいた。

「次もきっと、当ててみせるよ。」

こんなにも楽しかった今日は1度で終わらしたくなかった僕の心は、
また今日みたいに笑って、笑って、帰り道にぎゅっとなるこの気持ちがあまりにも愛しくて
通天閣の光の秘密をまだ君には教えなかった。